美術科<2年制>
日本画コース / Japanese Painting
教員インタビュー
大切なのは心の表現
石股 昭 教授
日本画コース
日本画コース主任
- 土のドラマを描く
- 3年前まで土の中ばかり描いていた。
「普通、絵のモチーフとしては地上の見えるモノを描きます。僕もそうでした。ある時樹木を描いている過程で、ふと疑問が僕の中に湧いてきたんです。樹木の根の下の部分はどうなっているのだろうと。生物は死を迎えると地中の土へ還ります。人間も同じ。命の源泉とも言える地中には、我々の知らないすごいドラマがあるじゃないかなって。工事現場で地面が掘り起こされていたら、思わず中を覗き込むのです。ミステリアスな暗黒の地下が、僕にはなまめかしく感じられてね」視線が地中の奥深くに投げかけられていった。そして誰もが見たことのない土の表現にずっとこだわり続けた。だが3年前にモチーフが一変する。やっと地上に現れた。 - 子供のころから身近だった日本画の世界
- 「物心がついた時から絵と言えば日本画の世界でした。京都生まれで父は伝統工芸の扇面絵師、お隣は日本画家、子供の頃から展覧会に行くといえば『日本画』でした」と話す。大学進学で国公立を目指した。「京都市立芸術大学の学科入試は数?で良かったんです。数学よりデッサンが描ければ合格出来る。国公立へ入れる。よしそれなら、デッサンを頑張ろうと思いました。少し不純な動機でしたが京都市立芸術大学に入学できました」そして大学院へ進んだ。日本画を6年間学んだ。
- 大切なのは心の表現
- 岩絵具を皿から紙に運んで乾いていく瞬間が実に美しく、それが日本画の醍醐味だという。「リアルに描くという点では油彩絵具の方が優れているでしょう。でも心を描くという点では岩絵具が一番だと思いますよ。日本画で大切なのは心の表現です。自分を揺り動かすモノを岩絵具に託して描く。絵で人に共感させるのです。もちろんすべての人に共感を求めるのは無理。少ないけれど誰かに共感してもらいたい、そう思って描いています」
そして学生たちには、自分を見つめる大切さを学んで欲しいと言う。「心が揺れるモノに出会うのは難しくはないのです。素直な心で対象物と向き合うと、必ずそこに潜む息づかいやエネルギーが感じられるはずです。同じ花を見ても一人一人感じられるものは違います。目に見えない『感じること』をもっと掘り下げ、その感動を表現して欲しい。岩絵具はまるで『魔法の粉』のように魅力的です」 - 2年間の実力
- 「短大2年間で本当に描ける?」と奈良芸に教えに来ることが決まった時多少不安があった。だが教鞭をとってみて衝撃を受けたという。「僕が6年間かかったことが、ここの学生は2年間でやってしまう。2年間で大きな公募展で入賞するのです。何十年日本画描いていても入賞出来ない人もいっぱいいる中でね。奈良芸はガンバリヤさんが多いので、集中して学べば描ける。今はそれが奈良芸の実力だと思うようになりました」
- 趣味は音楽、スポーツ
- 芸術をする人に趣味を問うのは難しいが、石股先生は『音楽とスポーツ』と答えた。特にサイモン&ガーファンクルのポール・サイモンの音楽が昔からお気に入り。毎年大晦日除夜の鐘を聞いたあとは、『明日に架ける橋』を聞いて新年を迎える。サイモンの生き方やフォークポップなメロディ、ギター演奏のうまさがたまらない魅力と言う。一方スポーツは子供の頃から万能。
学生時代は、テニスとラグビーの選手。「最近、スポーツをする機会が減りましたが、子供の運動会に行くとつい熱くなってしまいます(笑)」と、やさしいお父さんの顔が覗いた。