美術科<2年制>

染織コース / Dyeing & Weaving

卒業生インタビュー

ファッションのトレンドをつかみ、洋服の素材となる布をデザインする

萩原 彩子

染織コース

現在の仕事内容は?
テキスタイル商社、ニチメンファッション(株)に勤務し企業デザイナーとしてテキスタイルの企画デザインをしています。会社が取り扱っている商品は、綿や化合繊のプリント・無地・先染めなどの織物です。私はその中でも主に綿プリントのデザインを担当しています。作業は手と頭を動かすことは基本ですが、パソコンなどのツール、イラストレーターやフォトショップのソフトも使っています。クライアントはアパレルから雑貨メーカーなど色々です。
展示会は年間に春夏・秋冬・盛夏の3回、東京・大阪・上海で開催しています。1シーズンの展示会で130~150柄、1つの柄には3~4の異なった配色があります。もちろん、これは製品化されたものだけですから、その何倍もの企画はしているんですよ。仕事の流れとしては、クライアントや図案家さんとのプレゼンに始まり、上司や企画メンバーと打ち合わせ、染工場との打ち合わせ、加工進行など書ききれないほどの様々な工程を経て、やっと世に出るんです。企画から展示会までおよそ半年、年に3回なので、秋冬、春夏、盛夏と少しずつ被っているので、もの凄く混乱します。先日秋冬物の展示会を終えたところです。営業担当と私たちデザイナーが中心となって展示会を開催します。展示会の構成や見せ方も私たちの仕事ですから、百貨店でも服や製品だけでなくディスプレイやショーウィンドウなども良くみて、リサーチしています。東京と大阪の展示会では売れ筋が違って、大阪はやはり柄モノが良く売れるんです(笑)。今頭の中は来年春夏物のプランニングでいっぱいです。常に先々を考えていかないといけないので1年中追いかけられている感じですね。
トレンドの先取りって難しいでしょうね。どんなところからヒントを得るのですか?
ファッションを予測するためにはアンテナを張り巡らせなければなりません。土日の休日には、街をリサーチすることも欠かせませんね。特に海外の最新ファッションは要チェックです。時にはショップで気になる服を買って、もったいないけど服を切り取って分析します。布地のデザインだけでなく素材の研究もします。「こんなのが流行りそうかな」と見極める眼が重要なんです。ただ自分の中でこだわりを持つと個性が出すぎて商品化出来ないこともあります。個性をちょっとオブラートに包み込む技術も必要になります。プランニングデザイナーとして、ジレンマを感じることもありますが、ビジネスなので売れる商品、クライアントの要望される商品を創らないとだめですからね。
やりがいを感じる時は?
私がデザインした布と街で出会うとやっぱりうれしいですね。平面でデザインしたものがカタチを変えて立体的な服に変身する、それは感動だしテキスタイルデザイナーをやっている実感を得る時です。一番楽しいのは、自分の考えていた図案が出来上がってきて配色をしている時です。布を表現することは大好きですから。
入社当時、企画会議に出ると億単位の数字が出てきてびっくりしました。デザインの企画で売れ行きが決まるんですから、責任重大です。
学生時代の思い出は?
染織コースの中で「染め」を中心にやっていました。学生時代は自分の作品のことだけ集中していれば良い時期ですから楽しい思い出ばかりです。モチーフ探しに旅に出たり、美術館へ行ったり、大学図書館も毎日のように利用していました。授業の中では現代芸術が面白かったですね。新しい美を意識したのがこの授業です。特に名和晃平さんという若手アーティストの作品を紹介された時は衝撃的でしたね。伝統工芸の美にばかり目を向けていましたが、彼のユニークな発想、高い表現力に驚きました。
学生時代は各地の公募展にも積極的に出品しました。受賞式出席に各地に出向いた時は、一人でギャラリーめぐりをしたものです。一日で30ヶ所のギャラリーをまわったこともあるんですよ。個展をしている作家さんと作品について話し込んだりしたのは楽しい思い出です。
後輩の学生にアドバイスを
奈良芸は、好きなことにひたすら打ち込める大学です。社会に出れば、いろいろ制約もあるのでオリジナリティを十分発揮できないと思います。学生時代には失敗を恐れないで、やりたいことにチャレンジして作品を創ってください。

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