美術科<2年制>

洋画コース / Oil Painting

教員インタビュー

テーマに翻弄されず、ちょうどいい距離感を保って描く

小笠 美華 教授

洋画コース
油彩制作・表現技法・デッサン

油彩、版画、テンペラ、フレスコ、混合と洋画コースの技法は盛りだくさん。「モチーフとテーマを考えてどの技法で描けばよいのか?可能性を広げることができるのが、奈良芸洋画コースの特徴です」
きっかけ
高校時代、獣医になろうと思っていた。だが父に「犬や猫だけでなく、大型の動物の手術もできるか?」と問われ、あっけなく断念。それなら美術の道に進もうと方向転換する。幼かった頃、祖母が家中に画用紙を貼って自由に絵を描かせてくれた。「絵を描いていた時の心地良さ、絵に集中できる時間が楽しくてね」美術への道を醸成していった。
フレスコとの出会い
京都市立芸大の入学式を控えて実家の徳島から京都に向かう途中、たまたま通りがかった大阪梅田の紀伊国屋書店のショーウィンドウに惹きつけられた。ミケランジェロの画集が飾ってあった。気になって本のページをめくる。旧約聖書の天地創造の物語を描いたシスティーナ礼拝堂の天井画、壮大な絵だった。フレスコという技法、ミケランジェロという人物に鮮烈な印象を持った。一緒にいた母が「そんなに興味があるんだったら入学祝いに買ってあげよう」と言って、当時結構な金額の画集を買ってくれた。大学入学後、専攻していた油画にたまたま壁画フレスコ研究室があることを知り、当然のようにのめりこんでいく。「何百年・何千年・・美しいままで残る耐久性のある技法、時間的スケールに魅力を感じました」
作品との距離感
制作する上で一番意識することは、作品と自分の距離感だという。「テーマに翻弄されないことです。構図、色、カタチなど造形的なことも考えて、作品におぼれず、離れすぎず描くことです。これが意外と難しいのです」ずっと人間をテーマに描いている。「葛藤や時間について描いていたのですが、最近は画面の中に頭部を大きく扱い、一人ひとりが目覚めて発芽する瞬間、そのひと時の大切さをテーマに描いています」
学生へ
「私たちは視覚芸術をやっていますから、見るということはことのほか大切です。先入観や自分本位の思い込みで見た気になるのではなく、日々新たな気持ちでモノを見てください。何か見つけてやろう。もっと見ることがないか。もっとできることはないか。毎日問い直してください。そして作品に対峙してください」

大地震、大津波、そして原発事故という未曾有の多重災害が起きた。「こんな時、アートで何ができるのでしょうね?子どもたちの悲しみややるせない気持ちを、絵を描くことで吐き出して、つくる喜びに少しでも悲しみが薄れるならケアしたいですね」

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