美術科<2年制>

日本画コース / Japanese Painting

卒業生インタビュー

仏絵師、彩 色師を目指して-日本画で培った技法を活かす

大西 史世

日本画コース

「まったく成り行きで、この仕事に入りました」と言う大西史世さん。「たまたま叔父が仏師をしていて、興味があったものですから卒業後に京の有名な仏師、松久宗琳先生のところに見学に行こうとしていたのです。そしたら叔父から仕事が忙しいので手伝って欲しいと依頼があって、自然にこの道に入ってしまいました。ちょうど私の卒業時はバブルが崩壊した直後で就職も少なく、また私自身も一般 事務系の仕事には就きたくなくてどうしようか迷っていた時でした。日本画を専攻していたことが活かせ、成り行きでこの仕事に就きました」

大西さんは、仏像を彩色し金箔を施す仕事をしている。「昨年8月に浄土宗総本山である京都知恩院の宗祖、法然上人御分身像の彩 色を担当しました。これは法然上人800年大遠忌にむけた記念事業で、知恩院からの依頼でした。現在知恩院、御影堂に安置されている法然像は鎌倉時代の作とされていて、浄土宗信仰の中心となる像です。今度新しく作った像はこの法然上人の御分身です。御分身像はこれから、全国の浄土宗寺院を巡回して信者の方々に接していただくようになります。この像は外側の彩 色だけでなく、像をくりぬいた中に仏絵も描きました。何百年後にこの像を開けた際、私の描いた仏絵が見られることになるでしょうね。光栄です」

現在大西さんは、仏像の彩色だけでなく寺院の襖絵や天井画も描いている。日本画で培った表現、技法を発揮して制作しているが、超薄の金箔を施すことはとても難しいと言う。

「最近は、仏像も中国や東南アジアからの輸入品が増えています。人件費が安いからです。日本で作られた仏像と輸入された仏像。今は過渡期で混在しています」仏像も輸入時代に入ったようである。しかし、仏像の修復は日本国内でしか出来ない。大西さんは仏像の修復も行う。風雨にさらされ年代を経た仏さまは、破損して修復の時期を迎える。その古い仏さまを洗って解体し、金箔や彩 色を施す。仏像を美しい姿に戻し、遠き未来に受け継がれていく状態に修復する。現代ある仏像を遠き未来の世に遺す。使命感のある仕事である。「仏さまは人々の礼拝の対象物。多くの人に見つめられ多くの祈りを受け止めます。精魂込めて取り組んでいます」(滋賀県在住)

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