美術科<2年制>

染織コース/ Dyeing Weaving

玉登ゆかり

アートで人の心を鮮やかに染めたい

玉登 ゆかりさん

染織コース
専攻科修了

大正時代を彷彿させるビル(登録文化財建造物、船場ビル)の一室、柔らかな自然の光を取り込んだギャラリーで「心を癒すアートのための空間を持ちたかった」と語る玉 登ゆかりさんは本学染織コースの卒業生。大阪のビジネス街の中心、本町でギャラリー「ドットアートコスモ」を主宰している。
 子供の頃転校が多くて、自分をわかってもらうには絵を見てもらうのが一番と考えたのがこの道に入るきっかけ。染織コースで布と染料を知る。絵の具では表現できない染料の世界に、日頃見過ごしていた色たちと出会う。布との対話、染めの奥深さ・楽しみを知った。  

本学専攻科卒業後は中学校の美術科教諭になる。しかし「描く・つくり上げる」というモノ作りの魅力が忘れられず、教職からテキスタイルデザイナーに転職。自動車の内装やスポーツウエア、インテリア関連などテキスタイルデザインを手がけた。 1996年にアトランタオリンピックのシンクロナイズドスイミングの日本代表水着デザインコンペで採用された後、2000年のシドニーオリンピック、2001年福岡で開催された世界選手権、2002年韓国釜山で開催されたアジア競技大会のシンクロナイズドスイミング日本代表水着を次々デザインし注目を浴びる。シンクロナイズドスイミングの水着は、選手の動きによってデザインのポイントを決める、選手の体を大きく見せるための色の割合を考えるなどが要求されると言う。

「オリンピックの仕事をすることで、“描く・つくり出す”ことの責任を強く感じるようになったのです。物づくりの側だけで無い、大きな宇宙感や世界観の中で物づくりを考えていこう。作品鑑賞の場所というだけでなく、作品の力によって少しずつ社会の事柄(自然や社会 他)を、つくり手と観る側の両者が考えていける場所をつくりたい。それで1999年に“ドットアートコスモ”を立ち上げました」  

ある日、ギャラリーで作品を観て涙する人に出会った。「どうして涙するのですか?」と聞くと「その作品を観ていたら、ただ涙が止まらない」と言う。作品が、観る人の潜在意識の深くに眠っている何かを覚醒させたようだ。作品の持つエネルギーが人の心を揺さぶる。つくり手として大きな歓びであった。つくり手と観る側が作品を通 じて心を通わせる。このギャラリーはアートを真ん中にして両者の心を開放させる空間・宇宙でありたいと願う。  

現在、ギャラリーでは若手アーティストの個展などを開催して後輩たちを育成している。  
またドットアートコスモギャラリーの外での活動として、若いアーティストたちと一緒に「DOTキャラバン・ギャラリー」という移動ギャラリーを行っている。保育園や幼稚園に出向き、子供たちと一緒に作品づくりをするボランティアである。幼い頃にアートの世界を体験させ、モノづくりの楽しさやみんなで協力して一つのモノをつくり上げる喜びを教え、心豊かな人に育って欲しいと続けている。  
奈良芸術短期大学では、少人数クラスで先生方から丁寧に指導してもらえたことが有難かったこと。キャンパス周辺の静かな環境。また大和臨地研究の授業では、飛鳥・奈良など近辺の文化や遺跡を勉強するという内容もさることながら、他コース生とも一緒の授業で同級生たちと仲良くなれて楽しかったという。 在学生には「もっと社会に広く目を向けて作品づくりにチャレンジして欲しい。未熟さに恐れずにアピールしながら、今しかトライ出来ない事がたくさんあるはず。そして、アートは人に夢を与える事を実体験して欲しい。DOTキャラバン・ギャラリーに参加してみませんか」とのメッセージ。

現在、染色作家としては心象風景を染色で表現する作品を制作している。無限の広がりのある色をどこまで進化させ自己表現できるか、今、人と作品の力のあり様の大きな魔力や魅了を感じ、人の心を鮮やかに染めたい、作品を創り続けたいと意欲を燃やす。

 

競技用水着をデザインされる玉登さん、会う前はパワフルで活動的な女性のイメージを描いていたが、実際の彼女は穏やかな、そして凛とした美しさのある女性だった。これから玉 登さんはどう進化していくのか期待したい。 (兵庫県出身)

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